2013-01-01から1年間の記事一覧

本当に危ういアベノ外交

平成25年12月26日、安倍晋三首相が靖国神社に参拝した。政治的・外向的存在になって久しいややこしい場所へ、あまつさえ中国や韓国との関係が冷え込んでいるこの時期に、わざわざ首相が参拝する以上、なんらかの戦略的意図があって然るべきだが、それが全然…

機知

「機知に富んだ冗談と、卑怯なはぐらかしは紙一重、いや、ほとんど同じものです。人間は何か言われたときに、機転もきかせず、はぐらかしもせず、絶句して黙り込むことによって目の前の相手への誠実さを表現することも、ときには大切なことなのです。わたし…

つじつまのあわなさについて

「進撃の巨人」というタイトルのマンガだかアニメだかがいま人気らしい。「の」の遣い方が奇妙で、一度きいたら忘れられないインパクトがある。 実はこのような「の」ヘンな遣い方は先例がけっこうある。自分が思いつくかぎりでも、梅棹忠夫の著作「文明の生…

リアリズムについて

コローの風景画は、もし現場の写真と見比べれば、なんでこんな何の変哲もない景色を彼は描く気になったのかわからないような場所が多くモチーフになっていると思う。しかしその何の変哲もない場所が、彼の観察を経て、彼の筆で描かれることによって、たちま…

ホーム&アウェイ

ダーウィンによると、オスとメスの容貌が甚だしく違う生物は、美しい装いをしている方が「選ばれる側」なのだそうだ。たとえば、クジャクにおいて容貌が美しいのはオスだが、あれはメスから選んでもらうための必死の演出なのであって、けっして「おれはオス…

「頭」とは何か

人間は自分の才能の有無についてはたいてい自覚的だ。たとえば生まれつき足が遅いのに「おれは足がはやい」と思い込む人も、絵が下手なのに「俺には絵の才能がある」と思い込む人もまずいない。しかし、頭の良し悪しについては、どういうことが大抵の人が誤…

切符

母方の実家が栃木県の小山市にあり、自分たち兄弟は、小学生の頃、夏休みのたびにそこへ泊まりがけで遊びにいっていた。 ある年の夏休み、つきそいで来ていた母が一足さきに横浜の金沢文庫にある自宅へ帰り、その数日のちに、三歳違いの兄と自分は、子どもた…

はじめに道具ありき

「学生運動の時代にもし『落としどころ』という言葉があったら、運動はもっと早く沈静化していたのではないか」という意味の言葉を最近読んだ。つまり「落としどころ」という言葉がなかったから「落としどころ」が見つからず、結果、対立する陣営どうし相手…

ファーストタッチ

高畑勲が自作「かぐや姫の物語」について、「下書きの鉛筆の線の勢いが、ペンでなぞると消えてしまう。自分はこの勢いを作品の中になんとか生かしたいと思ってきた」という意味のことを語っているのを視たことがある。確かに、自分が予告編で視た「かぐや姫…

資産と負債

人間の持ち物には資産と負債の二種類がある。この二つは正反対の性格を持ちながら、容易にその判別がつかない奇妙な対称性を持つ。「一人っ子政策」を始めたころの中国は、その膨大な人口を「負債」ととらえ、なるべく少なくしようと躍起になっていたが、実…

★自分を幸せにする方法(抜き書き)

自分を幸せにする方法 人生の大事な局面であまりにもうまくいかないことが多いと、自分の人生には避けられない罠ばかりがあるように思えてきます。私もそのような状態に何度か陥ったことがあります(解雇、失恋、孤独、鬱など)。 そんな時、3つの習慣のお陰…

表現について

言葉というものは、同じ内容でも発言者の心理状態や性格や、立場によって表現が変わる。たとえば数式化すれば「A=B」で終わってしまう内容も、以下のように様々なバリエーションを見せる。AはBである。(断定式)AはBだと思う。(謙譲式)AはBなんじ…

★拉致と決断(蓮池薫) 【抜き書き】

自由は人生の目的を達成するための必要な条件であって、自由自体が人生の目的にはなり得ない。 興に乗じて歌う歌や踊りも、美の世界に浸って鑑賞する絵画や彫刻も、この国ではすべて指導者崇拝や敵対階級との血まみれの闘争、社会主義建設をモチーフにしなけ…

★日本人の戦争(ドナルド・キーン) 【抜き書き】

わたしはこの戦争を戦い抜くことを、日本の知識階級人は、大和民族として絶対に必要と感じていることを信ずることができる。わたしたちは、彼らのいわゆる「黄色民族」である。この区別された民族の優秀性を決定するために戦うのだ。ドイツの戦いとも違う。…

★白川静の著作より 【抜き書き】

文字は最初に出たものほど立派なんです。歴史が常に発展向上して高められてゆくものだと考えるならば、書の歴史はまさに逆です。一つの様式が生まれたときが、最高の表現だったということなんですね。だから歴史という物をあまり狭く考えてはならないわけで…

★大東亜戦争肯定論(林房雄)【抜き書き】 

私たちが平和と思ったのは、次の戦闘のための小休止だったのではなかったか。徳川二百年の平和が破られた時に、長い一つの戦争が始まり、それは昭和二十年八月十五日にやっと終止符を打たれたのではなかったか。戦争教育なしには戦争は行えない。が、教育以…

★走ることについて語るときに僕の語ること(村上春樹) 【抜き書き】

もっと書き続けられそうなところで思い切って筆を置く。そうすれば翌日の作業のとりかかりが楽になる。継続すること。リズムを断ち切らないこと。長期的な作業にとってはそれが重要だ。いったんリズムが設定されてしまえば、あとはなんとでもなる。しかし、…

★呪いの時代 (内田樹) 【抜き書き】

僕たちは誰でも自分の知っていることを過大評価し、自分の知らないことを過小評価する傾向にあります。ネット上では相手を傷つける能力、相手を沈黙に追い込む能力が、ほとんどそれだけが競われています。もっとも少ない言葉で、もっとも効果的に他者を傷つ…

★私にとって書くということ(三浦綾子) 【抜き書き】

「ご夫婦というものは、そう簡単に別れられないものだと思います。また別れてはならないものだと思います。わたくしは、とにかく一人の女性をおしのけ、不幸におとしいれてまで幸福になりたいとは思いません。それとも課長さんは、そんな女性が好きなのでし…

★最終講義(内田樹) 【抜き書き】

自分の声が聞き取れないような騒音の中で創造的なアイデアが口を付いて出るということはありません。声が気持ちよく響くという音響環境は学校教育にとっては大切な条件なのです。音楽とは「もうきこえない音」がまだ聞こえていて、「まだ聞こえない音」がも…

二つの足場

娘が通う小学校にいく。自分が小学生だったころは授業参観と言ったが、今は「学校開放」と称し、学校の中ならどこをうろついても良いという建前になっている。教室の中に貼り出している作文は、ひと月ほど前に行われた運動会が共通のテーマになっており、何…

永遠の機心

よく「人間だから間違いを犯すのは仕方がない」という言い方をするが、では「人間以外の決して間違いを犯さない存在」とはいったい何か。それはおそらく、近代までは「神」であり、そして現代においては「機械」である。「機械のように正確だ」という類の修…

煙が目にしみる

自分は二十年間喫煙者だったが、最後の十年間は、タバコを吸い終わるたびに「タバコの無い世界に行きたい。。」などとメルヘンチックな妄想にひたっていた。 「タバコでストレスが解消できる」という論理は、正確にいうと「タバコを吸いたいというストレスは…

リサイクル

輪廻転生とは、要するに「死んだあとに、自分以外の何かに生まれ変わること」であるが、仏教の教えによると、生まれ変わり先は実にさまざまで、イモリが人間になることがあるし、美女が鈍牛に生まれ変わることもある。そして、それを決定するのが「因果」と…

井筒俊彦と「西洋」の思想

言語哲学者の井筒俊彦の生誕百年を記念して企画された、慶応義塾大学の公開セミナー「井筒俊彦と西洋の思想」を聞きにいく。自分はこういった無料セミナーのたぐいに忍び込むのを一つの趣味にしているが、その目的は、新しい知識を吸収するというよりも、話…

それをいっちゃあおしまいよ

以前、学習塾に子どもを通わせるお母さんたちを集めたグループインタビューを見学したとき、我が子の受験勉強について参加者たちが持論を熱っぽく語りあっている中、ひとりのお母さんが、「でも、そんなに勉強していい大学に入って卒業しても、今はろくな企…

人生談義

喫茶店や電車の中で、若い女性どうしの話を聞くともなく聞いていると(つまり聞いているわけだが)、えんえんと恋愛の話をしていることがよくある。これは自分の知る限り、女性特有の現象で、若い男性どうしが恋愛の話を延々としている場面にはまずお目にか…

可能性の寿命

青信号が点滅している横断歩道を、急いで渡ろうと走るのは一苦労だが、渡るのを諦めて立ち止まれば楽になれる。しかし、信号はいずれ再び青になるが、「可能性」は、たいていの場合、一度つかむのを諦めれば二度とよみがえることはない。チャンスが閉じる瀬…

悲しさ

人間の感情には、大きく分けて「快い」ものと「不快」なものがあると思うが、では「悲しい」という感情は、快なのか、不快なのか。 まず、「快」である、という考えかたがある。たとえば良い音楽や、優れた文学や美術作品には、多くの場合「悲しみ」が含有し…

敬意を添える

他者とのコミュニケーションなくして、人間は何一つ作り上げることはできない。目の前の古ぼけた雑居ビル一本にしてからが、どれほどのコミュニケーションを積み重ねた末に建っているものなのか、知れたものではない。現代において「仕事ができる」とは「コ…