2016-09-01から1ヶ月間の記事一覧

歴史を知るとは

アルベール・カミュというフランスの作家が書いた「異邦人」という小説の主人公ムルソーは、「太陽がまぶしかったから」という理由でアラブ人を殺害する。この「動機」は裁判において当然ながら何らの情状も酌量されず、彼は死刑判決を下される。殺人の動機…

情報洪水で進む「無知」

先日、新聞で以下のような一文を読んだ。「かつてのテロは大義をもって専制的な権力者の命を狙うものだった。だが現代のテロは社会に恐怖を与えるための無差別大量殺人で、テロの目的自体が堕落した」 まるでテロには「崇高なテロ」と「堕落したテロ」がある…

心の無い神

人間の能力は心技体の掛け算で算出される。人工知能は不動心と体力で圧倒的なアドバンテージがありハナから対峙する人間は分が悪い。人工知能と人間のボードゲームは、今や機械に人間がいいように嬲られるSMショーの様相を呈しておりもはやその手の趣味の人…

「死亡率100%を生きる」 木原武一 著

「死亡率100%を生きる」 木原武一 著 著者の木原武一は、一般にはあまり名を知られていないかもしれないが、自分はその教養の扱い方やアイデアの発想力、文章の風韻が好きで、本屋や図書館でその著作を見つけるたびに、読むことにしている作家である。 この…

「コンビニ人間」を読む。

芥川賞受賞作「コンビニ人間」を読む。 コンビニ店員である主人公の女性は、小学生の時に、拾った鳥の死骸をヤキトリにして食べようと言ったり、ケンカの仲裁をするために男の子の後頭部をスコップで殴りつけたり、ヒステリーを起こした担任の女教師のスカー…

江藤淳「妻と私」

故江藤淳に、「妻と私」という本があり、久しぶりに再読した。これは著者の長い執筆生活で、もっとも売れた本らしい。売れゆきがよかった本だから「いい本」とは言えないが、いい本の判定指標として「売れ行き」という一項目はあっていいと思う。 「妻と私」…