2014-01-01から1年間の記事一覧

迷走外交、唯一の果実

拉致被害者の家族にとってはどんな形にせよ肉親が戻ってくる可能性が高まるのは喜ばしいところで、それについて何も言うことはないが、今回のような「解決への前進」の仕方は、いかにも不味い。 今、北朝鮮と日本は「中国と韓国を敵に回している」という対外…

国家の断末魔

オバマ氏は「黒いサル」 北朝鮮が常軌逸した差別表現の論文 米は憤慨 http://sankei.jp.msn.com/world/news/140509/kor14050908450002-n1.htm 日本がその昔「鬼畜米英」を国を挙げて叫んでいたころの国情を思わせる。かの国の戦時(非常時)感覚も頂点に達し…

このハシ渡るべからず

●戦争の原因がつまるところ領土の分捕り合戦であることは今に始まった話ではなく、その幼稚さを責めたところで抑止力としては働かない。戦争を抑止するのは自国と敵国の戦争遂行能力の冷徹な比較考量であって、そこでの「負ける」あるいは「勝っても損害が甚…

雁屋氏の覚悟

雁屋氏は「福島をこういう状態にした原子力行政と東電を糾弾する」のが本意なのだろうが、「こういう状態だ」ということによって被害者である「福島」がハレーションを起こす事態は、ひょっとすると計算外だったかもしれない。 加害者の罪過を糾弾するために…

「美味しんぼ問題」で表現の自由を考える

●「表現の自由」は、本来、国民どうしが認め合うものではなく、国家権力の干渉を規制する主旨のものだ。これは、戦前の国家権力による言論統制へのアンチテーゼとして生まれた経緯がある。●ここでいう「表現」とは「(公序良俗に反しない)思想や感情」のア…

洋画家たちの青春 -白馬会から光風会へ

東京ステーションギャラリーに「洋画家たちの青春-白馬会から光風会へ」展を見に行く。以下はいいなと思った作品。岡田三郎助「縫いとり」 和田英作「彦根内湖」 小磯良平「横臥裸婦」 中村研一「秋花」 小林萬吾「富士」 その他、中西利雄「花」、三宅克己…

相談員美輪明宏

美輪明宏が回答者になった人生相談集「人生学校 虎の巻」という本を図書館でみつけて読んだ。以前から著者には怪物的風貌のわりには案外まともなことを言っているイメージを持っていたが、ここまで見識がある人だとは思わなかった。人生相談の回答といえば、…

ザビエルの嘆き

自宅から最寄り駅までの通勤の路上で、地味な風体の男性あるいは女性が、キリスト教の本を積み上げた台の横に立っているのを、自分は時々目にする。一種の販売をかねた布教活動であろう。以前、その販売員をぼんやりと見ていたら、向こうからにっこりと笑み…

STAP細胞の実在性について

自分はその論文作法上のお粗末はさておき、STAP細胞は実際に生成に成功したのではないかと考えている。その理由は、科学的成果の場合、現代においては如何に巧みにデータを捏造をしても、それはいずれ時間の問題でバレるに決まっており、そんな一時の虚栄心…

言葉のエネルギー保存の法則

自分はもともと他者に対してとても辛辣で狭量な人間で、気に入らない人間やソリが合わない言動を目にすると、相手を罵倒する不穏当な言葉が頭の中でずらりと並ぶ。並んだ言葉はそのまま表に出すと相手との関係が決定的に崩壊するから、自分はその言葉たちを…

人、いずくんぞ隠さんや

言葉の核心にはメッセージがあり、それは時に表向きの意味とは食い違うことがある。ぶっきらぼうだが思いやりがある言葉や、丁寧だが底意地の悪い言葉や、寛容の姿を借りた狭量な言葉や、冷静だが焦りの色が見える言葉が、そこらじゅうで飛び交っている。発…

ある思い上がり

東日本大震災の直後に、小説や演劇など表現をなりわいにしている人たちが、こういった圧倒的な天変地異や悲惨な被害を目の前にすると、今まで我々は何をしてきたのだろう、そして今我々に何ができるのだろうと無力感にさいなまれる、ようなことをよく言って…

無人兵器の非人道性について

戦場において、人間の肉体が物理学や化学の破壊力と全面的に対峙するようになったのは第一次世界大戦からだといわれている。鋼鉄の戦車や、飛行機や毒ガスが人間の身体を圧倒的な力で損ない、息の根を止める光景が全ヨーロッパに広がった。それが人々に与え…

進化論の穴

「キリンの首は高いところの草を食べるために長く伸びた」というラマルクの用不用説は現代では妄想扱いされているが、先ごろ、親の恐怖体験の記憶が子に継承される可能性を示唆する実験結果が出たという報道があり、これが敷衍されればラマルク説も妄想とは…

漂流する「保守」

●戦後ながらく日本の保守勢力は「親米」をその党是としてきたのだが、安倍政権はついにアメリカと決別しようとしている。アメリカが主導した東京裁判の否定や、アメリカがつくった憲法を改正する政治的運動や、アメリカが判定したA級戦犯を祀る靖国神社参拝…

偶然

ある日の午後、自分は数人で会社の狭い会議室にいた。ときおり談笑が混じるような気楽な雰囲気の中、ふと自分は、これまでの何十年間まるでちがう人生の軌跡をトレースしてきた人々が、今同じ場所に居合わせている不思議を思った。 半年ほど前、ある広大な公…

改革と苦難

鳴り物入りで始まった改革機運が尻つぼみになった最近の事例として「ゆとり教育」と「司法制度改革」がある。「ゆとり」は「ゆるみ」になって学力低下を招き、「司法制度改革」は法律家の過剰供給によって価値崩壊を招いた、というのが主な理由のようだ。「…

まだまだ続けてほしい浅田真央

浅田真央が今回のオリンピックで期していたのは、順位ではなく自分が納得するパフォーマンスだった。そのチャンスはショートプログラムとフリーの2回与えられており1回目は逃したが、2回目を見事にものにした。 浅田真央の満足感は「悔しかったバンクーバ…

女子力とは何か

STAP細胞で今をときめく小保方晴子女史は、研究室の壁をピンクや黄色でいろどり、花柄のソファを置き、実験器具にはムーミンのキャラクターのシールなどを貼り、祖母からもらった割烹着で仕事をしていることでも話題になった。アニメのキャラクターを仕事場…

河内守悪事露見之件

ようするに彼は、「全聾の作曲家」というキャラクターを現実社会の中で演じていた一種の「俳優」だったわけだ。そのキャラクター設定と演技力、さらには他者を巻き込むプロデュース力によって、社会的名声や(おそらく多大なる)金銭を得ていたという意味に…

あるべき姿がない国

戦前の日本はまるで未開な封建社会だったような言われ方をすることがあるが、東京が昭和15年のオリンピック開催地に選ばれるほどの国力があった。(戦争によりのちに返上)昭和29年、つまり戦後わずか9年にして、東京は再びオリンピックの候補地になる…

「先生」とは何ものか

「先生が指導法を体系化したことや、演奏技術について細かく言ったことで、斎藤秀雄の教え方は機械的だ、と批判する人が時々いる。でもそれは全然違う。先生が僕らに教え込んだのは音楽をやる気持ちそのものだ。作曲家の意図を一音一音の中からつかみだし、…

わかりやすさという欺瞞

わざとわけの分からない話をして煙に巻く狡猾さや、自分の理解が及ばない話をむやみに有難がる軽薄さは論外として、意味が明確な話をしてそれが聞き手や読み手に理解されれば足れり、というわけではない。 「わかりやすい話」には隠蔽や捏造や曲解などあらゆ…

細川氏都知事選出馬に思う

自分は小泉氏の脱原発思想にはおおむね賛成だが、多くの人が指摘しているようにそれを地方自治体の首長選挙の争点に持ち出すのは的外れだし、都政そっちのけで脱原発にばかりご執心の都知事ってどうなんだと考える。第一線を退き、晴耕雨読の人生の最終章に…

欠落感とは何か

欠落感というものは、「他人はたいてい持っているが自分は持っていない場合」と、「かつて自分は持っていたが今の自分は持っていない場合」の二種類の状況において生じる。だからこの二つが合体した「他人はたいてい持っていてかつて自分も持っていたが、今…

マーケティングの罠

マクドナルドが業績低迷にあえいでいる原因は、結局のところ「マーケティング」に走りすぎたからではないだろうか。いわゆるマーケティングの4Pのうちなんといっても最重要なのが「product(商品力)」のはずだが、それを四分の一の地位に押しこめ、「出店…

正月という「幻想」

近所の神社に初詣にいき、長蛇の列を並んで賽銭を投げ、形どおりの参拝をし、おみくじを引いてきた。おみくじは過って二枚取り出してしまい、そのうちの一枚を売り子である巫女さんに返すときに「どちらが良い出目だろう」と一瞬ためらった。自分の一連の行…