相談員美輪明宏

 美輪明宏が回答者になった人生相談集「人生学校 虎の巻」という本を図書館でみつけて読んだ。以前から著者には怪物的風貌のわりには案外まともなことを言っているイメージを持っていたが、ここまで見識がある人だとは思わなかった。

人生相談の回答といえば、

①相談者の心に寄り添い過ぎて回答者も一緒に途方にくれる
②実践不可能なご高説
③陳腐な一般論
④視点の奇抜さの自慢
⑤漫談風のおちゃらけ

のいずれか、あるいは混合で述べられるものだが、美輪明宏のものはそのいずれでもなかった。

彼(彼女?)は、基本的には、人間の弱さや愚かさや希望・欲望に対して寛容だが、寛容である枠がきっちりと規定されており、その枠からはみ出している相談には一転して不寛容になり、容赦のない否定と鋭い詰問を浴びかけせる。

しかし、一見して情け容赦のない人格攻撃のようでも、「あなたは根本的に間違っている。その間違いに気づき、正さないかぎり、問題は解決しないし、幸せにもなれない」という本物の思いやり(著者流にいえば愛)から発露している性質のものだ。また、そういうもの(著者流にいえば愛)があればこそ、なあなあで済ませることができないのだともいえる。

一方、その枠の中で悩み、苦しんでいる相談者に対しては、底知れない同情(著者流にいえば愛)と励ましで現況から立ち上がるエネルギーを与えるとともに、理性的で具体的な、物事の捉え方や行動の指針を指南する。この人は本物のクール・ヘッドとウォーム・ハートの持ち主であり、ほんらい人生相談というものは、こういう人でないと回答する資格がないし、聞く価値もないのではと思った。