金剛力士像

東大寺南大門の仁王像。こういった多くの人の目に触れてきたモチーフは、表情が皆の目にすっかり焼きいているので、形やニュアンスの狂いがすぐに判ってしまう。本物の仁王様は、この絵より、もっと怒っているし、もっと優しい。さらに激しく深い感情が伝わ…

和髪

絵とは関係ないが、昨日、半年ぶりに剣道をした。基本打ちを入れた本格的な稽古は、ほぼ学校卒業以来で、二十年以上ぶりぐらいだった。今年に入ってから、毎日素振りをしているせいか、体は意外とスムーズに動いたが、頭の中は学生時代のまま、体だけ衰えて…

肖像画

肖像画

絵は大きい絵より、小さい絵の方がごまかしがきかない。特にデッサンの狂いは、小さい絵の方がてきめんに判る。これは、大きな絵を制作時には、時々下がって眺めることが必要なことにつながる。 一見うまく仕上がった絵でも、縮小して表示すると、とたんに粗…

肖像画

村上春樹の「騎士団長殺し」の主人公は肖像画家だが、この人がタレる絵画のうんちくがものすごく面白い。村上春樹は絵画にも通暁していることがよくわかる。ストーリーや登場人物はおなじみのパターンだが、あの小説は一種の教養小説でもある。一度読んだ小…

ゴルフのレッスン

ゴルフ練習場に2人で来ている人たちを見ていると、たいてい腕に差があり、自然と、上手な方が、そうでない方を指導するような図式になる。 「上手な方」はそうでない方へ、肩の開きをどうしろとか、グリップの握りがどうだ、といろいろな角度からの指導をす…

本質の世界

色は考えるのが面倒だし、少なくとも自分の画の場合、色をつけたところで画面は少しも良くならないから敢えて色をつけようとはあまり思わない。長谷川等伯に「松林図」という国宝の墨絵があるが、あれに絵に色をつけても、価値は減ずるばかりだろう。日本画…

切り離す道具

外食後に入った喫茶店で、ある若いカップルがいた。女性の方が色々話しかけているのだが、男性の方はうつむいてスマホばかりいじっていた。年代を問わず、当世のカップルでよく見られる風景である。 ひと昔前なら、会話が途切れ、手持無沙汰なとき、多くの男…

意思を顕し、そして通した偉大さ

「退位礼正殿の儀」で天皇として最後のお言葉を述べられる陛下 元号が新しくなった。この改元は、新しい天皇が即位するというよりも、憲仁天皇陛下と美智子皇后陛下が退位するという意味あいの方が自分にとっては濃い。 自分は、生まれ育った「昭和」への愛…

「膝枕」からの目覚め

休日の昭和記念公園に訪れる人たちは、家族連れかカップルがその大半を占める。芝生広場では、ボール遊びなどの興じる親子や、レジャーシートの上で二人で寝そべるカップルの姿であふれている。そういったカップルの中に、たとえば女性の膝枕で横になってい…

きょうだいが走り回る小川の畔

この絵を描いているあいだじゅう、10歳ぐらいの長男を頭にした三人きょうだいが、自分の周辺を走り回っていた。もちろん、自分の描いている絵に興味を持ってのことではなく、目の前に広がる自然の風景に興奮していただけなのだが。 一番下の女の子はおそら…

思考実験「自分は間違えている」

人間は一般的に今すでに自分が持っているもの(物事や経験)の価値について、間違った評価ばかりしていると思う。「自分が持っている」ということを理由にして「こんなものはたいしたものではない」と過小評価したり、逆に「これはすごく価値のあるものだ」…

選ぶ側の性

金曜夜の十一時過ぎの電車の中は、飲み会帰りの乗客が多いものだが、先日、それらしきすっかり出来上がっている、男1人女2人の若い三人組が自分の目の前で会話をしているの聴いた。 容姿的には美男でも美女でもない三人だが(この情報は余計だが)、女の1…

空虚を満たす旅

街なかで、中年以降の年代の夫婦と思われる男女が、犬を数匹つれて散歩しているのを見ることがしばしばある。 このうちに幾割かは、子供がいない夫婦で、彼らは子供の代わりに犬を育て、生活しているのだ、とも思われる。逆に考えれば、子供のいる夫婦では、…

意味のある線

絵を描くときいつも意識にのぼるのは、塗っている色や、引いている線に「意味」があるか、ということである。 「意味」で伝わりにくいのなら、「効果」といい換えてもよい。その一筆一筆が、自分にとっての良い絵(それは必ずしも他者からの評価とは一致しな…

女装教授と「嫌われる勇気」

例によって、絵と文章は関係はない。 「嫌われる勇気」(岸見一郎・古賀史健)を再読する。一度目で大まかな主旨はつかんだつもりでも、二度目だとまた違う味わいかたができる。また、そもそも忘れているところ、ちゃんと読んでいなかったところがたくさんあ…

美しい顔

新宿駅の地下通路で、美人の誉れ高いある若手女優の大きな壁広告を見て、なんという美しい顔だろうと思いつつ、美しい顔に生まれついた人生について少し考えた。 年少の頃から容姿の美しさを賛美され続けた人は、自分の価値は容姿にしかないときっと思いこむ…

絵と会話

人物の絵は、一筆入れるとまるで印象が変わるところが描いていて面白い。風景の絵でも基本は同じなのだが、人物の場合は、それがてきめんで、非常に刺激的だ。 これは、日常会話において、片言隻句でその場の雰囲気が変わってしまうことがあるのに、よく似て…

緩みと腐り

元日産CEOのゴーン氏が、身柄拘束される前に録画したビデオを見た。この事件が発覚した当初は、自分は、かつての配下にゴーン氏は謀略によってはめられた、という印象をもっていたが、昨今の報道を見る限り、どう法的な瑕疵があるのか自分には判然としないが…

巡る花

昭和記念公園 桜の花が咲き始めるころになると、「命短し恋せよ乙女」という歌の一フレーズを思い出す。桜は咲いたそばからすぐ散っていく。その散りざまから「日本人の滅びの美学」なんぞを見出そうとすれば見出せるのかもしれない。確かに桜の花の命は短い…

病者の心

東京オリンピックで金メダルが期待されている水泳選手が、白血病に罹患していることを公表したら、ある大臣が「がっかりした」とコメントし、それに対する糾弾や、擁護の声が交錯している。 おおまかにいって、糾弾するのは反安倍政権、擁護するのは親安倍政…

遊牧民の馬上弓射

名刺交換と美術鑑賞

オーギュスト・ルノアール 仕事の会合で、大勢の出席者と片っ端から名刺交換することがある。そのうちの多くとは名刺交換をしただけの縁でそれっきりになるのだが、相手の人生はそれっきりではないし、当方にしてもおなじことだ。 自分は名刺だけをした人の…

天草四郎の愛国心

観世清和「羽衣」 長崎のキリシタンが天草四郎を頂いて原城に立て籠もり、幕府の包囲軍と戦っていたとき、埒が明かない幕府軍はオランダ軍に海からの砲撃を依頼した。 近代戦争は、終局における大量破壊兵器の使用で決着することが多い。彰義隊の上野戦争に…

ボクシング世界戦

弥生美術館で観たバロン吉元画伯の迫力ある格闘シーンに刺激されて、男の闘うシーンを描いてみた。

薄汚れたリアリズム

Theodor Philipsen あるお笑いタレントが、アイドルに向かって、冗談混じりにいわゆる「枕営業」をすすめるような発言をテレビ番組の中でしたことが物議をかもしている。昨今の社会の空気では、この手の「物議」も大したムーブメントにはならずに、いずれは…

弥生美術館 竹久夢二美術館

弥生美術館 バロン吉元の個展を観る。 絵の魅力は必ずしもモチーフを精確に描くことがから生じるわけではないが、魅了のある実物を精確に描くことは実物の魅力をそのまま写し取ることとほぼ同じなのだから、精確な絵から生じる魅力というものも少なからずあ…

無知蒙昧

たとえ自分の方に理があったとしても、相手の逃げ道を全部塞いで徹底的に追い込むような戦い方をするのは間違いだ。そもそもこういう野蛮な戦い方をするのは人間同士だけで、動物同士のケンカでは「負けた」サインが明確にあり、「勝った」方はそのサインが…

寒空

昭和記念公園 みどりの文化ゾーン 鉛筆でかるくアタリをつけ、あとは薄墨の筆ペンで仕上げる。所要時間一時間ほど。まだ描き込みが足りないが、あまりの寒さに退散する。ただ、これ以上描き込んだところであまり良くはならないだろうとも思う。

木刀

以前はあまりそういう意識なかったのだが、剣道では単純な打突力が思いのほか重要だということに、最近気づいた。 これはボクシングにおいてパンチ力が必要だ、というのと同じで、当たり前といえば当たり前だが、当たる外れるに関係なく、「打突する力」とい…