本質の世界

f:id:kirinta8183:20190507004334j:plain


 色は考えるのが面倒だし、少なくとも自分の画の場合、色をつけたところで画面は少しも良くならないから敢えて色をつけようとはあまり思わない。長谷川等伯に「松林図」という国宝の墨絵があるが、あれに絵に色をつけても、価値は減ずるばかりだろう。日本画の極北たる等伯を引き合いに出すのはおこがましいが、物事は往々にして極端なケースを想定するとわかりやすくなるので。

経営学者のピーター・ドラッガーは、日本の水墨画を好み、名品を数多くコレクションしていたが、おそらく、水墨画の本質だけを抽出して構成し、余計な要素を一切削り取った姿に、美を感じ、共感を覚えるのだろう。

ただ、世の中は、「無駄」や「雑音」が隠し味になっていることも多く、よく言われるように「無駄の効用」も軽んじるべきではないが、どこがまでが本質で、どこからが無駄かを見極めるのは難しい。