露呈したAIの限界

 ひところは「AIが人間の仕事をすべてが奪って(代わってくれて、ともいう)暇になった人間はベーシックインカムで無為に(遊んで、ともいう)暮らす社会が現出する」説がまことしやかに囁かれていたが、それがいかに能天気な空想だったかを、このコロナ禍で人間は早くも思い知らされた形だ。

AIが代替できる仕事など、人間の仕事のうちのほんの一部分で、残りの大部分は、人間同士が密に近づかないと成り立たないことがここに至って、やっと明確になった。これは技術的な問題ではなく、原理的な真実だ。

テレワークでやり取りできるのは「情報」だけで、衣類や食糧などの「モノ」は作る人と運ぶ人が必要である。モノは工場で完全にオートメーションになり、運搬は自動運転車両かドローンで運べば人間は要らないようになる、かもしれないが、そんな世の中は恐らく永遠に空想の中でしか存在しないだろう。