フランシスコ・デ・ゴヤ 「サバーサ・ガルシア」
自分の感情はそう深いものではないが、ゴヤの表現は、少なくとも自分の心の最も深いところに届くまでの鋭利さと強さを備えている。
自分の描くものや、書くものは、ひとまず棚に上げて言うのだが、世の作品を見聞きしていると、もっと深く考えられないか、もっと複雑に考えられないか、そんなに単純で浅い場所に安住しているのではなく、もっと複雑で深い場所までいき、さらにそこを突き抜けて単純なものを表現できないか、と感じることがある。
人間が到達しうる深みというものがあり、そこに到達した人間がかつて確かに存在したという事実は、大げさかもしれないが自分に生きる希望を与えてくれる。
おそらく芸術がこの世に存在する意義の一端は、そんなところにもあるのではないだろうか。