感情と論理

  たとえどんなに乱暴な言葉をつかっても相手に好意を持っていればそれは伝わるし、たとえどんなに慇懃な言葉づかいをしても相手への敬意を欠けばそれは伝わる。人間の感情は、つねに態度や行動として表出するもので、論語の「人いずくんぞかくさんや」という言葉はその機微を表現している。

重要なのは内面の感情を練ったり、発展させたりすることであって、それを表現する論理を磨くことではない。人間は論理的に考えるのではなく感情的に想う存在であり、論理とは自分の感情に社会性と説得性を持たせるためのツールに過ぎない。

表現すべき感情が無いのに、論理を組み立てる術法だけを求めるのは、石油が出ない場所にパイプラインを引くぐらい意味がないことだ。桃李があれば自ずと蹊(みち)ができあがるように、その感情に力強いものがあれば、それを表現するための論理は、ごく自然に整うものだ。