日本庭園 みんなの原っぱ

 木を描くのが、自分には依然として難しい。どうしても生来の手癖が出てしまう。出来上がってみれば、どの木も実物と程遠く、三角形のおにぎりのような形になっている。

せっかく現地で描いているのだから、ちゃんと実物と観察しなければならない。

途中で雷がゴロゴロ鳴り始めたのでお絵かきは早々に切り上げ、自宅で仕上げたことも悪かったようだ。頭の中のイメージだけで描く空想画になってしまった。まるで絵本の背景画だ。とはいえ、絵本にしては備えるべき情緒がない。

木を一本ちゃんと描く練習をすべきか、と以前書いたが、やはりそれが必要なようだ。

「みんなの原っぱ」という広大な芝生広場で、イスラムカップルがフリスビーで遊んでいるのを見る。

なぜイスラムカップルだとわかったのかというと、女性の方が真っ黒いブルカを全身に纏っていたからだ。ちなみに男性の方はシャツにGパンというカジュアルな装いである。

今の日本の気温の中で、外出時にいつもあの格好をするのは大変だろう、と思うが、祖国も今の日本と同じくらいに暑いのならば、そのあたりは慣れっこなのかもしれない。

全身真っ黒のブルカとフリスビーの組み合わせはギャップがあるが、あの装いの中にも、ごく当たり前の若い女性がいると考えれば、そう驚くことでもないのかもしれない。

このご時世にアメリカの属国のような日本に来てくれて、さらに女性があのいで立ちでいてくれるということは、イスラム社会において、日本のイメージはさほど傷ついていないといえるのではないか。そうであればありがたいことである。

イスラム社会は基本男尊女卑らしいが、ひとたび結婚すると、家庭の中では妻が夫を尻に敷くケースが多い、とも聞いたことがある。実際のところはわからないが、女性が見当違いの方向に投げたフリスビーをいそいそと拾いに行く男性の後ろ姿に、そんな気配を感じないでもない。