交剣知愛

 昨日25年ぶりに防具をつけて剣道をした。25年といえば、赤ん坊が生れて幼児になって剣道を始めて、小学生になって道場に通い出し、中学生で部活に入り、高校生になり大学を卒業して、警察に入り特練生になってレギュラーになるまでの時間である。四半世紀といういいかたもある。思えば遠くに来たものだ。

 稽古をして驚いたのは、自分の剣道観が往時とは全く変わっていることだった。これは、おそらく、自分の対人関係観の変化に起因するのだろう。現役で剣道をしていたころは、相手と対峙したときにまず恐怖を感じ、そして身構えるところから始めていたような気がするが、それが随分薄くなっていた、というかほとんどなかった。

日常生活や日常業務では、相手の様子を観察し、上手いタイミングで自分から動き出すと、相手も動いてくれて、それにうまく乗じれは成果が出る、ということが体でわかってきたが、そういった人生観は、剣道にも応用できるようだ。

なによりも、打ったり打たれたりがけっこうたのしい。自分が打てるのも楽しい(まったく当たらなかったが)が、相手から打たれて「まいった」と表示することも楽しい。なんだか、面の奥でニヤニヤしてしまった。

戦っている相手と、戦いながら礼儀正しく交流することが楽しい。そして、だんだん、いま相手をしてくれている人のことが好きになって、感謝の念がわいてくる。

これは幼いころからよく聞いた「交剣知愛」という言葉そのものではないか。正直なところ、自分にこういう剣道観を得られるときがくるとはおもわなかった。

体が続かず、四人としか剣を交えることはできなかったが、とても有意義で、楽しい時間を過ごすことができた。生きていればいろいろなことがあるものだ。