僧侶と虎

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 せんだって、横山光輝の漫画を読んだときに、坊主の頭を一本がきの曲線ではなく、楕円の二段階で描いていることに気がついた。もちろん、本物の人間の頭は二段階にできてはいないが、こういうふうに描くと、描線の単調さからうまく免れることができることに気がづいた。

 その気づきを、今回このお坊さんの頭を描くときに活かしてみた。手前味噌めくが、自分的には上手くいったように思う。こんなことは誰も気づかないだろうが、自分のことはさておき一般論では、良い作品というものは、誰にも気がついてもらえない微妙な工夫の絶えざる蓄積によって、誰もが気づく美観を呈するに至ったものだろう。

 この誰も気づかない微妙な工夫を積み上げることの重要さを表現したのが「神は細部に宿る」というフレーズなのだと思う。

 細部を蔑ろにしてはいけない。誰も見ていなくても、自分自身は必ず見ている。いつも細部を蔑ろにしていると、いつも細部を蔑ろにしている自分自身を蔑ろにするようになり、その自己へ向けた軽蔑心は、いつか作品の堕落という形で顕れるだろうから。