奇妙な  

電車の中で前に座った中年男性が、株式投資入門みたいな本を読んでいた。この時勢のもと、とてもわかりやすい行動だが、株とはそもそも「みんなが買っているときには買ってはないならない」もので、これは、およそ20年ぐらい前、日本人すべての骨身にしみた常識だと個人的には思っていたが、それは甚だしい誤解だったようだ。

それにしても、株とはつくづく奇妙なものだ。みんなが買っている時は買ってはならないし、かといって、みんなが買わない時は自分も買う気が起きないものだ。なんとなれば、株で儲ける秘訣とは、

「買う気がしない時に、買う気がしない銘柄を、ムリヤリ買う」

ところにあるといえるかもしれない。つまり「こんな時期に、こんな会社の株を買うバカがあるか」ぐらいの世間体的には愚かな投資が、結果的には一番賢い投資になる、ということだ。

このセオリーは、ほかの事象にも応用できないだろうか、と試しに考えてみる。たとえば、「こんな年齢で、こんな男(女)と結婚するバカがあるか」ぐらいのタイミングと相手で結婚した方が結果的には幸せになる、といったようなことはないだろうか・・まあ、ケースとしてないこともないだろうが、これをセオリーにまで昇華するのは、ちょっと苦しい感じがする。やはり、株とはつくづく奇妙なものだ。