きょうの中東情勢

 中東は、もはやどことどこが連携していて、どことどこが敵対しているのかも定かではない泥沼。こんな修羅場にも世界の平和を守るために出かけていく破目になった自衛隊員の胸中やいかに。

でも、安保法制における自衛隊員の活動範囲は「戦闘現場以外」のはずだから心配は無用だ。マッハで飛び交うジェット戦闘機の空爆で「戦闘現場以外」が一瞬にして「戦闘現場」になった時でも、思慮深い日本政府はきっと効果的な対処方法を用意していることだろう。心強い限りである。

また、宗主国様の援軍として海外に派兵された自衛隊員が戦闘に巻き込れて犠牲になった時に、靖国神社に「英霊」として祀ることも、きっとちゃんと決めてあるにちがいない。それでこそ、後顧の憂いなく自衛隊員は存分にお国のために粉骨砕身できるというものだ。

そんなおり、こんなニュースが。

反政府勢力(自由シリア軍)へのアメリカの支援は、ヌスラ戦線を通してイスラム国に流れているという話もある。間抜けなだけに、とてもありそうな話だが、もしかすると意図的な支援かもしれない。

米国、シリア反政府訓練を縮小
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151009-00000111-mai-n_ame


そもそも自由シリア軍アメリカからの支援金が目当てでアサド政権に「反抗しているフリ」をしているだけだという話もあるから、アメリカからの支援が打ち切られれば、かれらは早晩退場するか、政権側に寝返るか、イスラム国に合流するかになるだろう。

そうなるとシリアは、「アサド政権+ロシア+イラン+北朝鮮(サブ)+中国(サブ)」VSイスラム国の頂上決戦の舞台になる。アメリカはこの2陣営のどちらにつくこともできず、蚊帳の外となる。もっともそれがオバマ大統領が心の底で臨んでいたことではあっただろうが。

つくづく不思議なのが、価格が下落している石油と身代金しかおもな「産業」がないはずのイスラム国が、どうやって「国民」を食わせ、そして多方面での戦争継続を進めることできているのかだ。よほど太いパトロンを掴んでいるとしか考えられないが、ではそれは誰なのか、あるいはどこの国なのか。

イスラム国の太いパトロンは、他でもない「アメリカ」であり、その同盟国「イスラエル」であるという向きがある。これは一見「トンデモ」説めくが、それなりの納得できる利害的根拠や、状況証拠があるとされる。

シリアでは「反アサド政権」ということでアメリカとイスラム国の利害は一致しているし、アサド政権と関係が深いイランを「不倶戴天の敵」とみなすイスラエルにも、イスラム国を支援する動機は十分にある。

要するにアメリカは、イラクではイスラム国を滅ぼそうとしているが、シリアではイスラム国を支援している(可能性がある)のだ。イスラム国は、シリアでアメリカから(自由イラク軍→ヌスラ戦線→イスラム国 ルートで)得た支援を、イラクでの対アメリカ戦争に使っているのかもしれない。

現在のシリアの大混乱は、少数派のアラウィ派のアサド政権が、多数派のスンニ派自国民を化学兵器で虐殺したときに、ノーベル平和賞ホルダーであるオバマ大統領が断固たる措置をとるのを躊躇したのがすべての元凶だ、という論があり、これには一定の説得力がある。

ただ、どんな暴君でも、力づくで亡き者にしたあとの政治空白でどんな恐ろしく厄介なことが起きるかは、アメリカはイラクでいやというほど学習ずみだから、アサド政権を過度に追い詰めるのに二の足を踏みたくなるアメリカ首脳の気分も、わかるような気がする。

戦争がつくづく嫌いなオバマ氏は、泥沼のイラクを放り出し、自国民を虐殺するアサド政権を見逃し、自分の「レガシー」づくりに余念がない。世界情勢的に存在感ゼロのキューバと国交を結ぶぐらいはご愛嬌だが、中東の覇権を狙っていると言われるイランと和解しようとするのは穏やかではない。

そもそもイランは、いにしえの息子ブッシュ政権が、イラク北朝鮮とともに「悪の枢軸」よばわりした凶悪国家のはずだが、今、制裁解除を折り込んで西側のビジネスマンがこぞってイラン詣をしており、日本もその中に混じっている。

外相のイラン訪問に21社役員同行 先行欧州勢を投資協定機に巻き返し
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151009-00000027-fsi-bus_all

悪の枢軸なんて、とんでもない。とっても気さくないいやつらなんだよ、イラン人って」というキャンペーン(イメージ操作?)も始まっている。

日本戦を控えたイラン代表の気さくな素顔
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151010-00358293-soccerk-socc

もともと日本とイランは仲がよくて、ひとつの象徴がイラン人を父に持つダルビッシュ投手の存在だが、さっそくサッカーでも日本代表がイランに親善試合に出かけることになっている。イランはそもそも古代ペルシア文明の発祥地でもあるし、平均的な民度アメリカよりも高いのかもしれない。

だからといって、核兵器を製造してよいという法はないが。

今回の結論:中東情勢は複雑怪奇なり。