イワン・クラムスコイ 「忘れえぬひと」

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 音楽といい、絵画といい、文学といい、ロシア人は地球上で一番芸術にひいでた、高度な文化を持つ民族かもしれない。しかし彼ら自身は、自らをヨーロッパ辺境の民とみなし、劣等感を持っていたことがドストエフスキーの小説などを読むと伝わってくる。

すぐれた人や、美しい人が、自分の優秀さや、自分の美しさを(謙遜ではなく、大真面目に)徹底的に否定するケースがしばしばあるが、そういった心理性向はその人が、優秀であり美しいことの証明でもある。

なぜなら、すぐれた人や美しい人ほど、頭の中ではっきりとした像を結んでいる自らの理想があり、それに達していない現状に絶望しがちだからだ。ロシア人の「劣等感」は、彼らが高い理想家であるがゆえである。