ロバート・ブルーム「日本女性」

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 ロバート・ブルームは明治の中頃の日本に滞在し、まだ徳川時代の空気が濃密に漂っていた当時の日本人の生活を描写した作品を数多く遺した。当時の日本の文化度の高さは、訪れた外国人が等しく驚嘆しているところで、多くの人はそれを文章で残したが、ロバート・ブルームはそれを美術作品で残した数少ない人物である。

当時の日本を描写した画家といえばチャールズ・ワーグマンが知られているが、彼の視線はジャーナリストあるいは風俗研究家のもので、ひたすらな芸術的観察をしたのは、自分の知るかぎりでは、ロバート・ブルームだけである。

「当時の日本は、今とちがって隅から隅まで美しさと気品に満ちていた」とまではいわないが、百数十年前には在って今は失われているものが確実にあるということを、彼の絵を観るたび痛感させられる。

ただ、その代わり、「当時は無かったが今はある」という日本人の美質もきっとあるにちがいないとも思うが、それを確かに感じることができるのは逆に百数十年前の人たちであって、惜しいことにわれわれ自身ではない。