井の頭公園

 外国人観光客をたくさん見る。海外旅行の貴重な一日を、名のある観光地めぐりではなく、こういう場所でのんびり過ごすことを選ぶのは、よほど旅慣れた人たちではないか。

弁財天。つい出来心で読んでしまった絵馬の文面に「●●●(ある作家)が人の嫌がることを書きませんように」というのがあった。かつてモデルにされて不愉快な思いをした人が書いたのだろうか。


武蔵野の名残りをとどめる木々。うっかりモチーフにしたくなる風景だが、こういった緑と茶色の世界だけの世界を描いてなお芸術作品として成立させるには、コローの大手腕を要する。


太宰治が入水自殺した玉川上水。人間は洗面器一杯の水で溺死しうるそうだが、実際、大の大人がこの水量で死ねるとは思えず、往時はもっと大きな流れだったのだろう。なお、「入水」というとなんだかロマンチックな色彩を帯びるが、死因的には「窒息死」に他ならず、彼もずいぶん苦しい死に方を選んだものだと思う。

https://www.youtube.com/watch?v=jntDVcu6zHQ

井の頭公園陸上競技場。そういえば、四百メートルのトラックを生で見るのは初めて。フィールドでは凧あげをしている中年男性がいた。どうやら誰が何をしてもいい場所らしい。

https://www.youtube.com/watch?v=2jKinP84f4U


トトロが受付をするジブリ美術館。こういう演出はどこか物悲しい感じがして、個人的にはあまり好きではない。


素人ではない草野球。体育会ノリの掛け合いがグラウンドに響く。高校大学時代の「つらい野球」は社会人の「たのしい野球」への通過儀礼、なのかもしれない。


井の頭公園近くの立ち飲み屋。部外者立ち入り禁止のオーラが漂っているが、勇気を出して足を踏み入れれば天国のような場所、なのかもしれない。人間が正気を保って生きていくには、日々こういったささやかだが深い愉しみを積み重ねることが必要である。


吉祥寺駅前の肉屋に並ぶ人々。どうやらコロッケかとんかつが目当てのようだが、コロッケもとんかつも大好きな身からするとコロッケやとんかつがこれ以上どう美味くなるのかちょっと見当がつかない。逆に言えば、コロッケやとんかつの美味さを個別に判定するには、コロッケやとんかつがさほど好きではないという条件が要るようだ。
 そういえば以前、「焼肉があまり好きじゃない」という人に向かって、「それはおいしい焼き肉を食べたことがないからだ」と言った人がいた。説く理の当否は別にして、自分はこういう口をきく人が嫌いである。


長澤まさみ」を起用したアンダーアーマーの広告。神から祝福されているかのような完璧な天分に恵まれているこういうタイプの人は、下心ある俗物に寄ってたかってむしゃぶられ、ボロ雑巾のようになって捨てられる陥穽があるが、そうならないためには自分の意思を明確にして、戦略的に我儘なぐらいに振舞うのがいい・・・と考えていたら、キャッチコピーが「I WILL 私の意志」だった。