4月11日のこと

 帰りの電車がトラブルで動かなくなり、他路線の振り替え輸送を利用し大回りして帰る。いつもより二時間ほど余計に時間をかけてやっと着いた駅で、誰かの吐いたゲロを踏む。

改札口で、振り替え輸送を利用したからSuicaの入口記録がない旨を駅員さんに告げると、「ご迷惑をおかけして申し訳ございません」と丁寧に謝られる。電車が止まった責任はない駅員さんからは謝られ、ゲロを吐いた誰かからは謝罪の言葉はない。

人生とは、謝ってほしい人から謝ってもらえず、謝らなくてもいい人から謝られる。人間は、自分が悪い時はなかなか謝ることができず、自分が悪くないときはやすやすと謝る。人間は、許してもらえそうな時は初めから謝り、許してもらえそうにない時は最後まで謝らない。

「謝罪」は真っ当にすることも正当に受けることも同じように難しい。つまりこの「駅員さん」は、個人的にはちっとも悪くないと思っていたからこそ、自分に対して「やすやすと」謝ったのである。

他人に迷惑をかけても謝らない人は、自分の罪を十分に自覚しているからこそであり、迷惑をかけたときすぐに謝る人は、自分の罪を十分に自覚していないからこそである。