自分とのつきあい方

 年齢を重ねて覚えるのは、ヒトとのつきあい方よりも、自分とのつきあい方だ。ヒトとのつきあい方は外側から教えてくれるが、自分とのつきあい方は内側から見つけ出すほかない。そして、自分の心体は途切れなく変わり続けるものだから、つきあい方も歩調を合わせて変えなくてはならない。

他人とのつきあい方にはマナーがあるが、自分とのつきあい方にはセオリーは無い。ただひとつ言えるのは、自分を嫌ったり卑下したりしても、なんの利得もないということだ。

若い時分は、今自分を嫌っておくと将来何かいいことがあるような気がしていたが、結局それは何も与えてくれなかった。

自分の意見を曲げてまで他人と妥協する必要はないが、自分自身と妥協することはとても必要で重要なことだ。また、生きるにあたって、他人には厳しくても甘くてもどっちでもいいが、基本姿勢として、自分にはなるべく甘くしておく必要がある。

「自分に甘くする」という言葉をもう少し彫琢すると、「自己肯定感を持つ」ということと、「愉しみに耽溺する」ということになる。

世の中の他者との紛争や自殺・自傷行為などは、当事者に「自己肯定感」が不足しているか、人生に耽溺できる「愉しみ」を見出せないかのいずれか、もしくは両方が、必ず真因になっている。

自分のありようを肯定することができず、たえず不平不満をもって自分や置かれている環境を嘆いている人間ほど、はた迷惑なものはない。しかし当人は自分はポテンシャルや向上心が他人よりあるからこういう心境になるのだと、へんな自尊心を持っているから始末に負えない。