ビットコインに関する覚え書き

 「ビットコイン」といえば、最近では日本にある取引所の社長の横領事件等もあり、どこかウサン臭いもの、というイメージがある。

 発行主体も管理主体もなく、誰が発案したのかも謎につつまれ、現時点で利用したことがある日本人は約3万人、決済ができるのはまだ国内100店舗と、すくなくとも日本においては「普及している」とは到底いえないレベルだが、ビットコインが秘めているポテンシャルは非常に高いと見られており、世界の大手銀行は、その対策を競って進めている。

 ビットコインの課題は安全性の担保だが、その基盤になっているのが「ブロックチェーン」という技術だ。ビットコインの取引は、世界中にある不特定多数のコンピュータにより、そのすべてが確認され認証されており、認証のために必要な計算に成功したコンピュータは報酬(1回の成功で25ビットコイン=約121万円)を受け取ることができる。

つまり、ブロックチェーンは遍在するコンピュータが成功報酬を狙って競い合い、こぞって安全性を高めるという仕組みであり、現在の銀行などによる取引記録の集中管理より、低コストで安全性も格段に優れていると言われている。

「インターネット以来の革命的技術」ともいわれる「ブロックチェーン」 は、ビットコインの仕組みを支えているだけでなく、「送金・決済」「株の売買」「不動産取引」「音楽のコンテンツ取引」等さまざまなビジネスに応用が利くとみられている。

これは、いわば究極の「中抜き(仲介者不要)」技術であり、たとえば、銀行の海外送金や振替サービス、著作権と使用料を管理している日本音楽著作権協会や、不動産登記をしている行政サービス、株の取引を仲介している証券会社・証券取引所などが、いずれはプレゼンスを失うだろうと言われている。

 なお、国内関係者の中には、「ビットコインをはじめとするフィンテックのブームの半分ぐらいは人為的に作られたもの。もっと冷静になった方がいい」「日本の銀行は振込みの確実さやATMの稼働率などを見ても欧米より質が高い。焦って波に乗ることはない」等の意見もある。

ただ、新技術に懐疑論はつきものであるし、インターネットの出現以来進みつづける、情報管理における「一元」から「分散」への流れ、サプライチェーンを「中抜き」する流れは止められず、ブロックチェーンの進化は、それらをさらに後押しするであろうことは、想像できる。

 なお、5月25日に仮想通貨の規制を盛り込んだ改正資金決済法という法律が成立した。裏返せば、それだけ、ビットコインに普及の兆しがあるということかもしれない。

 それに先立つ2月には日経新聞が「金融庁がついに仮想通貨を貨幣と認定した」と報じ、金融庁がその火消に躍起になったばかりだが、国としても民間で次々にイノベーションが起こって置き去りにされるより、早めに法の網に取り込んで監視下に置いたほうがいい、という判断に至ったということなのだろう。

 発案者は誰かもはっきりせず(サトシ・ナカモトという日本人という説がある)、元グーグルのビットコイン主要開発者は最近「あれは失敗作だった」とも言っている。ビットコインの発行上限は2,100万枚と決められているそうだが、その算出根拠も複雑を極めている。

 その解説が微細を極めるほどに煙に巻かれている感が募るばかりのビットコインの正体はいったいなんなのか、正直なところさっぱりわからないが、 インターネットが生んだあだ花だ、といって済ませれるような代物ではないことは、どうやら確かなようだ。