自分のご機嫌をとる

 我慢には、「したいことをしない」我慢と、「したくないことをする」我慢の二種類がある。子どもが先ず覚えるべき我慢は「したいことをしない」方で、「したくないことをする」方はもっと成長してから身につけたほうがいいと考えている。

その理由は、あまり幼い頃から「したくないことをする」我慢を覚えると、自分が本当に何を望んでいるのか解らない人間になってしまうのではないかと考えるからだ。また、嫌なことを我慢し続けられる能力を過度に身につけると、人生観の歪みや、心の破綻につながりかねないのではないかと考えるからだ。

もとより人間の幸せ・不幸せはひとすじ縄ではいかない。凶事が幸福につながっていたり、吉報が不幸のとば口だった、なんてこともある。望んでいない事態に直面したとき、抵抗するか受容するかの選択が、最終的にはどんな結末を呼ぶかの予想は容易につかないのが相場である。

しかし、その時その時で、自分の心が直面している現実をどう感じているのかをけっして軽んじてはならない。そして、自分が真に望んでいることを尊重する選択から逃げてはならない。

自分自身は、最も頼もしい味方であると同時に、最も恐るべき敵だ。畢竟、自分とは世界そのものだ。世界を敵に回して勝った国がないように、自分を敵に回して勝った人はいない。いつまでも自分を心強い味方にしておくために、そのご機嫌をとることにもっと人間は意識的になっていいと思う。