誰もが背負う「千人にひとり」

「新規事業」を成功させるコツはおそらく「下手な鉄砲数撃ちゃ当たる」以外あり得ないと思う。それにはある程度の「下手な鉄砲」に目をつぶる上層部の度量が要る。

バットを振ってみなくてはボール当たるかどうかはわからない。バットを振る前に当たるかどうか心配したって意味がない。とはいえバットがボールに当るにはそれなりの理法(体力や技術や精神状態やタイミング)が要るのだが、それだって振った後でしか理法があったかどうかはわからないものだ。

銀行が書かせる事業計画書は、銀行の融資担当者が事業失敗の累が自分に及ばないための防波堤に過ぎない。多くの場合、事業を発想するのは勘であり、事業を成功させるのは運であり、これは 文書化できる筋合いのものではないのだ。

新規事業というと、すぐスマホや先進技術がどうたらという方向に走りがちであるが、「まずいうどん屋ばかりの世の中においしいうどん屋をつくる」というのだって立派な新規事業だし、そちらの路線の方がよほど有望だと思う。(ただしシャープがいまさらうどん屋をつくるわけにはいかないだろうけど)

ほとんどの人間は1000人に1人の難事(不幸や不如意や病気・怪我や障碍)に直面している。1000人に1人だから同類の他人に接することはごくまれで、ゆえにほぼ例外なく誰もが孤独のうちに「自分ほど不運な人間はいない」と思い込んでいる。

1000人にひとりだから「トレンド」ではないが、日本人全体では該当者は10万人いることになり、マーケットとして必ずしもちいさいなものではない。これからの新規事業はこの「1000人に1人」市場に狙いを定めるのもひとつの手ではなかろうか。