現実の罠

 数値目標というものは、確かに尻を叩く効果がある反面、ブレークスルーを阻害する要素がある。人間には、数値目標を目の前にして、奮い立つ面と、萎える面の2つがある。

経営の要諦は、具体的な目標と、抽象的な目的をどう使い分けるかだが、前者には性悪説の人生観が、後者には性善説の人生観が隠れており、正真正銘の大事業は、決して数値目標からは生じないことはたぶん事実だ。

極端な例かもしれないが、戦後日本の復興において、日本国民は政府から数値目標を押しつけられていたかというと勿論そんなことはない。松下幸之助は小さな独立を果たした時に、未来のパナソニックの事業規模を構想していたかというと全然そういうことはない。

ときとして、現実主義では現実に勝てないことある。現実を乗り越えるにはしばしば理想の助力が必要になる。しかし理想が助力になるには、それが現実である、またはそれがいずれ現実になると信じる力が必要になる。