「楽しむ」ということ

 「〇〇を楽しんでください」というお定まりのフレーズがあるが、楽しいときは言われなくたって勝手に楽しむし、楽しいなんて思えないことをするときは要らざる強制になるし、ようするにこれは言う側が自己満足しているだけのまるで価値のない言葉だろう。

たぶんこれは「have a good day」とか「Enjoy yourself」とかの邦訳なのだろうが、外国語にはネイティブにしかわからない語感があり、おそらく原語には日本語に移したときに醸し出される押し付け感は皆無で、たんなる別れの挨拶程度の言葉なのだと思う。

「楽しい」というのは事後の感想であって、それ自体を目指すものではない。世間的に「楽しい」とされている場面で塗炭の苦しみを感じることもあるし、真逆のこともある。

「楽しもう」と意識することは余分なだけでなくマイナスにさえ働く「邪念」であり、こういう言葉を軽々しく発するだけで、その人の程度が知れる気がする。