醜い中だるみ

  毅然たる態度で、人命第一に、テロに屈せず、激しい怒りを覚えながら、情報収集に全力を挙げ、冷静に推移を見守る・・・ってなんだかわけがわからん状況になってきた。

ようするに、素人が余計な手出しをするとやけどするから、いっそのこと何もしない方が利口だということなのだろうか。はたまた、人質なんて煮るなり焼くなり好きにしてくれ、と匙をなげたということなのだろうか。

どうも日本政府は、もはや状況へのシリアスな関心を失い、勝手に中だるみをしているようにしか見えない。

何もできないのでヒマだから、ヒマつぶしに国外で拘束された人質を救出することを名目に自衛隊を海外に派遣しやすくするための法整備でもしておこうか、なんて発想が姑息を通り過ぎて悪党すぎる。過激組織に拘束された人質を軍隊が救出することがどれほど困難を極めるか知ってて言っているのだろうか。

恐らく知ってて言っている(最低限その程度の知的レベルにはあると信じたい)のだろうが、自衛隊の海外派兵を合理化するためには、人質事件だろうがなんだろうが利用できるものはなんでも利用しようとするこのスタンスに理解を示す国民なんて、よほどの安倍信者でもないかぎりまずいないだろう。

安倍首相のことは特段バカだとは思わないが、この程度の思考力や見識しか持ち合わせていない人物が国政のトップに就くことができてしまうシステムはほんとうに考えものだ。もちろんこれは安倍氏個人の責任ではなく、日本全体の課題なのだが。

なお、「こういう非常時には挙国一致で取り組むべきで、むやみな政府批判などするものではない」という議論があるが、非常時に政府批判しなくていつ批判するのだろうか。平穏時の政府批判など馬耳東風で聞き流されるだけだろう。

極端な仮定になるが、日本軍がミッドウェー海戦で海軍力を崩壊させたとき、国民の側が事実を知る情報環境にあり、さらに政権批判や政権選択をしうる権利状況にあったとしたら、都市という都市の空爆も無かっただろうし、もとより2発の原爆投下も無かったかもしれない。今となっては夢物語だが。

つまり、非常時にこそ愚かな政権の足をひっぱり、むちゃな政策を妨害する、そういう意識と機能を国民の側は持たなくてはならないのではないだろうか。