72時間の緊迫

「人命第一」と「テロの要求には屈しない」は単純に矛盾する話だと思うのだが。矛盾すると知ってて言っているのならば大うそつきだし、矛盾していることすら知らないとすればたいへんなバカだ。

人質になった二人は、昨年の衆院総選挙以前にすでに行方不明になっており、イスラム国の手に落ちていることは容易想像できる状況だった。そういう条件下で、「援助金」を拠出したり、イスラエルと握手することがかの「国」をどう刺激するのか、これも容易に先読みできる状況だった。

にもかかわらずそれを行ったということは、最初から二人の「人命」など、「同盟国」との信義あるいは忠誠という大義の前では、屁とも思っていなかったということである。なんと殊勝な「国益」主義者だろうか。

この事件の結末が、もし人質二人が殺害されて終わったら「激しい怒りを覚える」「許すまじき蛮行」「謹んで哀悼の意を表する」と型どおりのコメントを出せば済むし、人質が救出されたら「我々の必死の救出活動が実を結んだ」「危険地帯への渡航は面倒見切れんぞ」と手柄話とお説教にしておけばいい。

首相以下政府関連部内は、同盟国の意向に反する身代金の支払いという選択肢は初めから排除しつつ、「全力で」救出活動をしている、あるいはしているフリをしているうちに、結果がどちらに転ぼうとも極端な話どっちでもいいと思ってるかもしれない。その自覚の有無にかかわらず。

どういう結末でも構わないから、一刻も早くこの緊迫状況から逃れたいと念じながら。