合意と民意

 日韓の「慰安婦合意」は、退任直前のオバマのレガシーづくりのためになされた強引な手打ちだから、オバマのレガシー破壊に勤しむことだけが生きがいのトランプは、合意の反古を目論む韓国側に立つケ―ス。

だから韓国政府は、現アホ日本政権と正面切ってケンカするのではなく、トランプをうまく焚きつければいいと思う。

トランプさえ懐柔すれば「トランプと100%共にある」安倍政権を手なづけるなど、赤子の手をひねる以下の易しさになる。韓国はトランプの「シリアの子供を救う」ためにミサイルまで飛ばす外交オンチぶりを利用しない手はない。

極めて浮薄な人道主義者の顔を持つトランプは、韓国政府が「従軍慰安婦の悲惨な歴史」を訴えれば、拍子抜けするぐらい簡単になびくだろう。ただし、トランプは長い文章を読むのが苦手なようだから、10分間のプロパカンダアニメでもつくって、上映会でもするとよいと思う。

安倍晋三氏は、日韓の合意は「1ミリも動かない」と言っているが、トランプのアメリカが動けば、安倍の日本は何十メートルだって動く。極めて情けないことだが、これは間違いない。

かつてオバマアメリカは、日韓関係がこじれているのは「慰安婦問題」がネックになってる、という見立てをしたが、この歴史観・政治観は全く誤っていた。

実際は逆さまで、こじれている日韓関係の象徴として「慰安婦問題」があるのだ。日韓関係のこじれた糸がほどけ、両国が穏やかに交わるようになれば、もともと濡れ衣だった「従軍慰安婦」問題など、自然に消滅する意味合いのものなのである

自分はいわゆる「従軍慰安婦」の日本軍による強制連行は無かったと認識しているし、南京事件の犠牲者数も、アメリカ軍の日本全土空爆と原爆投下という戦争犯罪の犠牲者と釣り合ように水増しされていると考えている。

しかしこの両事件は、現実問題として、日本の朝鮮半島および大陸支配の過去に対する被支配国民の「恨み」の象徴的存在になって(しまって)いるので、もし日本政府が、真剣に中国・韓国と友好関係を結びたいと考えているのなら、慎重にも慎重を重ねて、扱うべきことがらである。

理不尽ではあるが、この事実から地べたに足がついた思考をしなくては、事態は本質的にはそれこそ「1ミリだって動かない」し、いっとき動いたかのように見えても、すぐに元の木阿弥になる。

対応に「慎重に慎重を重ね」ないのならば、日本(の現政府)は、中国や韓国と真剣に友好関係を結ぼうという気はない、というメッセージがそれぞれの相手に伝わることになる。

従軍慰安婦」問題はその根幹部分を朝日新聞が捻じ曲げて報道し、「南京事件」の犠牲者数はアメリカの都合で水増しされたという背景があるにせよ、現実問題として「象徴」となってしまっている以上、これらの問題を手荒に扱うことは禁物である。

朝日新聞社 「記事を訂正、おわびしご説明します」
http://www.asahi.com/shimbun/3rd/2014122337.html

日本側にその認識がなければ、たとえ時の政権間で何度も政略的な合意に漕ぎつけても、それは何度でも「民意」によって覆される。独裁国家にせよ、民主主義国家にせよ、社会主義国家にせよ、国家のよって立つ姿は、終局的には、常に「民意」によって定まるものだからだ。