その場で腹に落ちてこそ

「言われてみれば当たり前だが、言われてみないと気づかない」話のことを「コロンブスの卵」と称することがある。実はこういう話は「言われなくてもわかっていること」や「言われてもわからないこと」と比べるとあまり多くない。

「言われなくてもわかっていること」は聞くまでもないし、「言われてもわからないこと」は、聞いても仕方がない。つまり人間が聞く価値があるのは「言われてみれば当たりだが、言われてみないと気づかない」ことだけである。

「今はまだわからなくてもいい。いずれ今僕が言ったことがわかるときがくるから」みたいなもったいぶった言い方があるが、こういう言葉には発する人の自己満足を出ない。言葉は聞いたその場で腹に落ちてこそ聞く意味がある。話し言葉にせよ、書き言葉にせよ、言葉を発する人間は本来その意識を眠らせてはならないのだが、

やはりそういう言葉を思いつくのは容易ではないらしく、人間は日々「言われなくてもわかっていること」や「言われてもわからないこと」ばかりを飽きもせずしゃべっている。