雪だるま

 

 小さなひと握りの雪が、転がすうちに次第にかさを増していき、ついには動かせないほど大きくなる。巨大化した雪だるまには、永遠にそこにあり続けるのではないかと思えるほどの盤石の存在感があるが、ひとたび周辺の気温が上がれば、たちまち姿を消してしまう。

 どんな大企業でも、はじめはちいさな町工場や一室の事務所だった。それが、時流と需要の大地を無我夢中で転がっていくうちにだんだん大きくなっていき、いつしか仰ぎ見るような偉容を備えるようになる。

 その存在感は、永遠の命を得たかのような印象を社内外の人々に与えるが、事業環境が変化すると、徐々に溶解が始まり、あっというまにその姿を消してしまうこともある。

 雪だるまが永遠の命を得るには、その居場所を冷凍庫にでも移動すればいいが、個々の企業がその命を長らえるために移動すべき場所はそれぞれで異なる。その移動場所を選択することは、冷凍庫を選ぶほどたやすいことではない。

 ちなみに、写真の雪だるまは、子供を喜ばせるために自分が作ったものだが、このあと、見知らぬ親子二人連れに足で蹴られ、壊された。