最近は、読むものといえば近所の図書館で借りた本ばかりだが、借りた本には返却期限があり、読んでいる途中でも、全く読んでなくても、それが来れば返さなくてはならない。不完全な読書のままで返すのが惜しく、そういう時には、目についた片言隻句を頼りに、一気にパラパラと斜め読みをするのだが、どの本でも、たいてい書き抜きしたくなるような素晴らしい文句が見つかる。おそらく、図書館の書架に並んでいる無数の本のどれにでも、光彩を放つ文章の一条ぐらいは必ず見つかるものだと思われる。世の中には、生きている人のものでも、死んでいる人のものでも、沁みるようないい言葉がたくさんある。こんなにいい言葉に溢れている世の中で、自分ごときがさらに言葉をつづる必要な無いようなものだが、他の人がたくさん息をしているからといって、自分が息をしなくて済むという理屈はない。息をしなくては自分が死んでしまうから息をするのであって、他の人がどんなに大量に息をしていようが関係がない。もちろん、文章を書くことはそれほど大げさなものではないが、事情は似たようなものだと思う。